奈良への旅行を計画中、あるいは東大寺の情報を調べていると、奈良大仏の鼻の穴という不思議なキーワードに出会うことがあります。大仏さまの鼻の穴と、よく聞く柱くぐりにはどのような関係があるのでしょうか。
この記事では、奈良大仏の鼻の穴と呼ばれる柱の大きさや、柱くぐりの意味について詳しく解説します。また、一般的に期待される柱くぐりのご利益や、柱の穴の場所、さらには柱くぐりと鬼門との関連性といった、検索した方が知りたい疑問に網羅的にお答えします。
- なぜ「大仏の鼻の穴」と呼ばれるのか、その由来
- 柱の穴の具体的な大きさと、大人が通れるかの目安
- 柱くぐりの意味や、無病息災などのご利益
- 大仏殿内の柱の穴の場所と、東大寺へのアクセス方法
奈良大仏の鼻の穴?柱くぐりの疑問を解説
呼ばれる由来
東大寺の大仏殿を訪れた多くの人が目にする「柱くぐり」。この柱にある穴が、なぜ奈良大仏の鼻の穴と呼ばれるようになったのでしょうか。
最も広く知られている理由は、この柱の穴の大きさが、大仏さま、すなわち国宝「銅造盧舎那仏坐像(どうぞう るしゃなぶつ ざぞう)」の鼻の穴と「同じ大きさ」である、という説に基づいています。
実際に寸法が全く同じであるかどうかの公式な記録は、東大寺の文献などにはっきりと残されているわけではありません。古くから「大仏さまの鼻の穴と同じくらい」と人々の間で言い伝えられてきた、一種の伝承であると考えられています。
では、なぜこのような伝承が生まれたのでしょうか。
それは、高さ約15メートルにも及ぶ大仏さまの壮大なスケールを、参拝者が身近に体感するための一つの方法だったと推測されます。ただ見上げるだけでは実感しにくい大仏さまの大きさを、「身体の一部(鼻の穴)と同じサイズの穴をくぐる」という体験的な行為によって、より深く理解してもらおうとしたのでしょう。
このユニークな伝承が参拝者の間で広く浸透したことで、「大仏さまの鼻の穴をくぐる」という体験そのものが東大寺参拝のハイライトの一つとなりました。そして現在では、「奈良大仏の鼻の穴」が柱くぐりの通称として広く定着しています。
東大寺が公式に「これは鼻の穴である」と定めているわけではなく、あくまで人々の間で長年にわたり育まれてきた俗信や伝承の一つですが、それこそが東大寺と人々の繋がりの深さを示していると言えるでしょう。
柱の穴の大きさと大人が通れるか
奈良大仏の鼻の穴と同じ大きさとされる柱の穴ですが、その具体的な寸法はどれくらいなのでしょうか。実際に挑戦する前に、正確なサイズを知っておくことは非常に大切です。
一般的に知られている寸法は以下の通りです。
| 項目 | 大きさ(目安) |
| 高さ | 約30cm |
| 幅 | 約37cm |
| 奥行き | 約120cm(柱の直径) |
この寸法を見て分かる通り、穴は決して大きくはありません。特に注目すべきは幅が約37cm(370mm)しかない点です。
大人が通る場合の目安と注意点
「この大きさで大人は通れるのか?」と不安に思われる方も多いでしょう。
結論から言えば、「その人の体格に大きく左右される」となります。子どもや小柄な方であれば、比較的スムーズにくぐり抜けられることが多いようです。しかし、大人の場合は慎重な判断が必要です。
参考までに、経済産業省が過去に実施した「人間特性基盤整備事業(size-JPN)」の調査データによれば、日本人成人女性の平均肩峰間隔(肩の骨格的な幅)は約35.6cm(356mm)とされています。これは穴の幅37cmよりも狭いため、多くの女性は通り抜けられる可能性がある計算になります。
一方で、日本人成人男性の平均肩峰間隔は約39.7cm(397mm)とされており、こちらは穴の幅37cmを上回っています。
もちろんこれは平均値であり、骨格や肉付きには個人差が大きいため一概には言えませんが、標準的な体格の男性や、肩幅が広い方、体格の良い方の場合は、途中でつかえてしまう可能性が非常に高いと考えられます。
実際に挑戦したものの、途中で抜けられなくなりそうになったり、国内外からの多くの観光客が見守る中で断念したりするケースもあるようです。大仏殿内は常に混雑しており、特に修学旅行や観光シーズンには柱の周りに長い列ができることもあります。
もし挑戦する場合は、以下の点に十分ご注意ください。
- ご自身の体格を客観的に判断する
- 絶対に無理をしないことが最も重要です。
- 服装を整える
- 身軽な状態が望ましいです。厚手の上着は脱ぎ、引っかかりやすいスカートよりもズボン(パンツスタイル)の方が適しています。
- 荷物や装飾品
- 鞄やリュックはもちろん、引っかかる可能性のあるネックレスやアクセサリー類も事前に外しておきましょう。
- 万が一の場合
- 途中で「難しい」と感じたら、パニックにならず、ゆっくりと後退して引き返してください。無理に進むと本当に抜け出せなくなる危険があります。
ご自身の安全を第一に、節度を持ってこのユニークな体験に臨むことが大切です。
柱くぐりの意味とご利益・鬼門の由来
多くの人が挑戦する柱くぐりですが、これにはどのような意味や由来があるのでしょうか。単なるアトラクションではなく、そこには深い信仰や思想が背景にあるとされています。主に二つの説が知られています。
ご利益(無病息災・厄除け)説
一つ目は、この穴をくぐり抜けることで「ご利益」があるとする説です。
最も一般的に言われているご利益は「無病息災」です。狭い穴を通り抜ける行為が、一種の「厄払い」や「厄除け」になると信じられています。
さらに、子どもが無事に通り抜けられると「元気に成長できる」、あるいは「頭が良くなる」といった健やかな成長への願いが込められることもあります。
また、この行為を一種の「胎内くぐり」と見なす考え方もあります。
胎内くぐりとは、仏像の胎内やお堂の暗い通路などを通り抜けることで、一度死んで生まれ変わり、心身ともに清らかになるという再生の儀式です。大仏さまの鼻の穴(=身体の一部)を通ることを、仏の胎内を通ることに擬(なぞら)え、心身のリフレッシュや開運を願って多くの人が挑戦します。
鬼門除けの由来説
二つ目は、この穴が設置された「場所」に関連する、より建築的・思想的な「鬼門除け」の説です。
柱くぐりができる柱は、大仏殿の北東の角(隅)に位置しています。古来より、日本や中国では北東の方角(丑寅:うしとら)は「鬼門(きもん)」とされ、邪気(鬼)が出入りする不吉な方角として忌み嫌われてきました。
これは陰陽道(おんみょうどう)に基づく思想であり、都の造営や重要な建物を建てる際には、鬼門の方角に特別な配慮がなされるのが常でした。
そのため、国家的な事業であった東大寺大仏殿においても、この鬼門にあたる柱に意図的に穴を開けることで、邪気が通り抜ける「道」を作り、悪い気が大仏殿の内部に溜まらないようにした、という考え方です。
この説に基づけば、柱くぐりは元々、参拝者のご利益を目的としたものではなく、大仏殿という神聖な空間を邪気から守るための、建築上の呪術的な「仕掛け」であった可能性が考えられます。
現在では、これら二つの説が人々の信仰の中で自然と融合しています。「鬼門除けという特別な意味を持つ穴をくぐることで、厄を払い、無病息災のご利益を得る」という、東大寺ならではの深く、ありがたい信仰体験として親しまれているのです。
奈良大仏の鼻の穴(柱くぐり)体験ガイド
柱の穴の場所と東大寺へのアクセス
奈良大仏の鼻の穴と呼ばれる柱くぐりを体験したい、あるいはその場所を実際にこの目で見てみたいと考えた場合、具体的にどこへ行けばよいのでしょうか。奈良公園は非常に広大であり、東大寺の敷地も広いため、迷わずに目的地に到達するための詳細な情報をご案内します。
柱の穴の場所
柱の穴があるのは、東大寺の中心的な建物である「大仏殿(金堂)」の内部です。
大仏殿に入ると、まず正面に鎮座する巨大な大仏さま(盧舎那仏坐像)の姿に圧倒されることでしょう。柱の穴は、その大仏さまの正面から見て、右後ろの方向、方角でいうと「北東」の隅にある太い柱の一つに開けられています。
これは、前のセクションで触れた「鬼門除け」の説とも一致する位置です。
大仏殿の内部は、大仏さまの周囲をぐるりと反時計回りに一周できる参拝順路が設定されています。順路に従って大仏さまの荘厳な姿を拝観しながら裏手側に回ると、北東の角にあたる柱の根元に、多くの人々が集まっている場所が見えてきます。そこが目的の柱くぐりの柱です。
多くの場合、修学旅行生や国内外からの観光客が順番待ちの列を作っていたり、くぐる様子を写真に収めたりしているため、比較的見つけやすい場所と言えるでしょう。
東大寺へのアクセスと拝観時間
東大寺へ訪問する際のアクセス方法と、大仏殿の拝観に関する基本情報です。特に拝観時間や行事予定は変更される可能性もありますので、訪問前には最新の情報を公式サイトなどでご確認いただくことを強くお勧めします。
公共交通機関でのアクセス
- バス利用
- JR大和路線・近鉄奈良線「奈良駅」から、奈良交通バスの市内循環バス(外回り)に乗車し、「東大寺大仏殿・春日大社前」バス停で下車します。所要時間は約10分~15分程度です。
- バス停からは、参道(緩やかな登り坂)を通り、南大門をくぐって徒歩約5分~10分で大仏殿の入口(中門)に到着します。
- 徒歩利用
- 近鉄奈良駅からは、奈良公園の景色を楽しみながら徒歩で約20分ほどの距離です。道中、鹿と触れ合いながら向かうこともできます。
- JR奈良駅からは距離があり、徒歩で約45分程度かかるため、バスの利用が現実的です。
大仏殿 拝観時間
拝観時間は季節によって異なりますのでご注意ください。
| 期間 | 拝観時間 |
| 4月~10月 | 7:30 ~ 17:30 |
| 11月~3月 | 8:00 ~ 17:00 |
拝観料について
東大寺の境内は広大ですが、柱くぐりがある「大仏殿」の内部に入るには、所定の拝観料が必要です。東大寺には大仏殿のほか、法華堂(三月堂)、戒壇堂、東大寺ミュージアムなどがあり、それぞれ別個に拝観料が設定されています(セット券もあります)。
「奈良大仏の鼻の穴」と呼ばれる柱くぐりが目的の場合は、大仏殿の拝観受付にて「大仏殿」の拝観券(大人・小人料金あり)をお求めください。
参考資料:東大寺公式サイト『拝観のご案内』
奈良大仏の鼻の穴の知識まとめ
奈良大仏の鼻の穴に関する様々な情報や知識の要点をまとめます
- 奈良大仏の鼻の穴とは東大寺大仏殿の柱にある穴の通称です
- 柱の穴が「大仏さまの鼻の穴と同じ大きさ」という伝承に由来します
- この行為は一般的に「柱くぐり」として知られています
- 柱の穴の大きさは高さ約30cm、幅は約37cmとされています
- 子どもや小柄な方は通り抜けられることが多い寸法です
- 大人が通れるかは体格によりますが肩幅が広いと難しいです
- 挑戦する際は無理をせず身軽な服装で行うことが推奨されます
- 柱くぐりの意味として「ご利益」を期待する説があります
- 具体的なご利益としては「無病息災」や「厄除け」が有名です
- 子どもにとっては「健やかな成長」や「学業成就」の願いも込められます
- もう一つの説として「鬼門除け」の由来が指摘されています
- 柱の穴は大仏殿の北東、つまり鬼門の方角に位置しています
- 鬼門に穴を開け邪気を逃がすための呪術的な意味があったとされます
- 柱の穴の場所は大仏殿内部の大仏さまから見て右後ろ側です
- 東大寺へのアクセスは奈良駅からバス利用が便利です