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金閣寺の白蛇の塚とは?安民沢に眠る歴史とご利益

世界的に有名な金閣寺ですが、その境内に「白蛇の塚」と呼ばれる場所があることをご存知でしょうか。金閣の煌びやかさとは対照的に、静かな森の中に佇むこの場所は、知る人ぞ知るスポットとして注目を集めています。

この記事では、金閣寺の境内にある安民沢という池に浮かぶ白蛇の塚について、その歴史的な背景や、なぜ金運のパワースポットとしてのご利益が期待されているのか、その理由を詳しく解説します。

この記事で分かること
  • 「白蛇の塚」が金閣寺の境内のどこにあるか
  • なぜ「白蛇」と呼ばれ、どのような歴史的背景を持つか
  • 金運のご利益が期待される理由
  • 効率的な拝観順路やアクセス方法
目次

金閣寺に佇む白蛇の塚とは?

世界遺産、金閣寺の境内に位置

「白蛇の塚」は、特定の寺社が単独で管理・運営している独立した施設ではありません。その所在地は、京都市北区にある臨済宗相国寺派の寺院であり、世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産の一つでもある、鹿苑寺(ろくおんじ)の広大な境内です。

鹿苑寺は、室町幕府三代将軍・足利義満が建てた舎利殿「金閣」があまりにも有名なため、一般的に「金閣寺」の通称で広く知られています。

白蛇の塚は、この金閣寺の拝観順路(一方通行)に組み込まれています。多くの観光客がまず目指すことになる、鏡湖池(きょうこち)に浮かぶ金閣(舎利殿)を鑑賞した後、順路に沿って裏手の丘を登っていく途中のエリアに、その塚は静かに佇んでいます。

金閣の絢爛豪華な姿を見た後、少し進んだ場所に位置しているため、正規のルートを辿れば見逃すことはまずありません。金閣寺の拝観受付(総門)で拝観料(大人500円、小・中学生300円 ※2025年11月現在)を納めれば、境内全域(金閣や白蛇の塚を含む)を見学することが可能です。白蛇の塚を訪れるために別途追加の料金が必要になることは一切ありませんので、ご安心ください。

安民沢の島にある

白蛇の塚が鎮座しているのは、金閣寺の境内、その北西部の少し高い場所にある「安民沢(あんみんたく)」と呼ばれる静かな池の中です。

この安民沢は、金閣(舎利殿)の姿を水面に映す「鏡湖池」とは全く異なる趣を持つ池です。鏡湖池が、足利義満によって極楽浄土の世界をこの世に再現するために計算され、整備された庭園の一部であるのに対し、安民沢はそれよりも古く、この地が金閣寺となる以前の時代からの遺構と伝えられています。

鬱蒼とした木々に囲まれた安民沢は、華やかな鏡湖池と比べ、より自然の風情を色濃く残しています。その名前の由来には諸説ありますが、古くは日照りが続いた際に雨乞いの儀式が行われた場所とも言われ、「民の安寧」を祈る神聖な場所であったことがうかがえます。

「白蛇の塚」とは、この安民沢の池の中央に浮かぶ小さな島、その島全体を指すのではなく、島の上に建てられている特徴的な石塔そのものを指します。訪問者は池のほとりに設けられた拝所から、水面に浮かぶ島と、そこに鎮座する塚を望み見る形となります。

西園寺家の鎮守という歴史

この「白蛇の塚」の石塔が持つ歴史は非常に古く、足利義満がこの地に「北山殿(きたやまどの)」(現在の金閣寺の前身)を造営する以前の、鎌倉時代にまで遡ります。

当時、この一帯は、太政大臣を輩出するなど朝廷で絶大な権勢を誇った公家・西園寺家(さいおんじけ)の広大な山荘「北山第(きたやまて)」が営まれていました。安民沢の島に建てられたこの石塔は、もともと西園寺家が自らの家の繁栄と安寧を祈る「鎮守(守り神)」として祀っていたものだと伝えられています。

白蛇の塚という名称が後世につけられたのに対し、石塔そのものの形状は非常に特異です。これは仏教において宇宙の構成要素(地・水・火・風・空)を示す「五輪塔」の、「笠」と呼ばれる屋根の部分だけを5段にわたって積み重ねたものです。

京都市埋蔵文化財研究所が発行した資料によれば、この石塔の形態や様式から、鎌倉時代中期頃(13世紀中頃)に造立されたものと推定されています。これは、足利義満が北山殿の造営を始める(1397年)より100年以上も前のことであり、この石塔は金閣寺の歴史よりも遥かに古い、この土地の記憶を今に伝える貴重な遺構の一つと言えます。

参考資料:公益財団法人京都市埋蔵文化財研究所「金閣寺(鹿苑寺)安民沢」

弁才天の使い「白蛇」信仰

では、鎌倉時代に造られた西園寺家の鎮守(石塔)が、なぜ後世になって「白蛇の塚」と呼ばれるようになったのでしょうか。これには、日本古来から続く「弁才天(べんざいてん)」への信仰が深く関わっています。

古くから、白い蛇(白蛇)は非常に縁起の良い、神聖な生き物とされてきました。特に、七福神の一柱である弁才天の使い、あるいは弁才天そのものの化身であると信じられています。

弁才天はもともとインドのヒンドゥー教の女神(サラスヴァティー)であり、河川の神、つまり「水の神」としての性格を持っていました。また、雄弁や音楽・芸能といった「才能」を司る神(弁才天)としても崇敬されました。

時代が下るにつれ、この「才」の字が財産の「財」の字と結びつき、「弁財天」とも表記されるようになります。これにより、五穀豊穣や商売繁盛、富をもたらす「財宝の神」としての性格も強く持つようになりました。

白蛇の塚がある「安民沢」が、前述の通り「水の神」に祈りを捧げる雨乞いの場であったこと、そして白蛇がその水の神である弁才天の使い(あるいは化身)であること。この二つの要素が結びつき、いつしか西園寺家の古い石塔は、弁才天信仰と一体化し、「白蛇の塚」として人々から崇敬を集めるようになったと推察されます。

白蛇の塚への拝観ルートと見所

京都屈指のパワースポット

金閣寺の境内において「白蛇の塚」は、まさに「知る人ぞ知る」聖地であり、近年そのスピリチュアルな価値に注目が集まっています。黄金に輝く金閣(舎利殿)の圧倒的な知名度や、鏡湖池(きょうこち)の計算され尽くした庭園美とは対照的に、この場所は目立たず、奥まった場所に静かに存在しています。

しかし、その静かな佇まいと、土地に根付いた古くからの信仰こそが、派手な観光地巡りでは得られない深い充足感や、スピリチュアルな魅力を求める人々を強く引きつけているのです。金閣が「陽」のエネルギーを放つ表の顔だとすれば、安民沢と白蛇の塚は「陰」のエネルギーを秘めた、内面的な場所と言えるかもしれません。

京都には数多くのパワースポットが存在しますが、その中でも白蛇の塚は非常にユニークな存在です。世界遺産である金閣寺の敷地内にありながら、そのルーツは金閣寺が建立される以前の鎌倉時代にまで遡る可能性がある、という歴史の深さを併せ持っています。

金閣の豪華絢爛な雰囲気(動)とは対照的に、安民沢の周辺は深い木々に囲まれ、水辺の静謐(せいひつ)で厳かな空気(静)が流れています。多くの観光客の喧騒から一歩離れたこの落ち着いた環境こそが、訪れる人々の心を鎮め、内面的な力を与えてくれるとされています。

期待される金運のご利益とは

白蛇の塚に期待されるご利益として、最も広く知られているのが「金運」の上昇です。

この金運信仰は、前述の「弁才天(べんざいてん)」信仰と密接に関連しています。弁才天はもともとインドの河川の神(サラスヴァティー)であり、水の神、そして音楽や弁舌といった「才能」の神(弁才天)でした。白蛇の塚が「安民沢」という池(水)の中にあることは、この水の神との結びつきを強く示しています。

時代が下るにつれ、日本古来の財福神である宇賀神(うがじん。しばしば蛇の姿で表される)と習合していきます。その過程で、「才」の字が財産の「財」の字と同一視されるようになり、「弁財天」とも表記されるようになりました。これにより、弁才天は五穀豊穣や商売繁盛、そして財宝をもたらす福の神としての性格を強く持つことになります。

その弁財天の使い(神使)、あるいは化身とされる「白蛇」を祀るこの塚は、自然な流れとして強力な金運上昇のパワースポットとして認識されるようになりました。塚の周囲の池や、島に向かう拝所には、金運アップや商売繁盛を願う人々によって投げ入れられた多くのお賽銭が見られ、その場所に対する人々の篤い信仰心を今に伝えています。

参拝方法と石塔の構造

白蛇の塚は安民沢の島にあり、島へ渡る橋などは架けられていないため、訪問者が直接、石塔の近くまで行くことはできません。池の手前、塚を正面に望む場所に拝所(はいしょ)が設けられていますので、そこから参拝します。

金閣寺(鹿苑寺)は臨済宗の寺院であるため、神社のような厳格な参拝作法(二礼二拍手一礼など)は定められていません。多くの訪問者は、拝所から島に向かって静かに手を合わせ、合掌(がっしょう)して心の中で祈りを捧げます。

また、拝所の前にはお賽銭を入れる器(賽銭箱)が置かれていますが、池に浮かぶ島や塚そのものに向かって、お賽銭を投げ入れる(投げ銭する)人の姿も多く見られます。これは、聖なる場所に自らの願いを届けようとする、古くからの信仰の形の一つです。

石塔の構造

塚の本体である石塔は、前述の通り、非常に珍しい形をしています。これは、仏塔の一種である「五輪塔(ごりんとう)」の「笠(かさ)」の部分(上から3番目の、ピラミッドのような形をした部分)だけを5つ、贅沢に積み重ねたものです。

五輪塔は、密教思想に基づき、下から「地(方形)・水(球形)・火(三角形)・風(半月形)・空(宝珠形)」という宇宙の5大要素を表す仏教的な塔であり、本来は供養塔やお墓として用いられるものです。

なぜこの場所の石塔が、通常の五輪塔の形式から逸脱し、「笠」だけを5段も重ねるという特異な形状になったのか、また、西園寺家が誰を祀るためにこれを建てたのか、その正確な理由は定かではありません。しかし、その鎌倉時代から続く古さと、他に類を見ない形状こそが、この場所の神秘性を一層高めている要因となっています。

金閣寺の拝観順路と所要時間

金閣寺の境内は、「池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)」となっており、訪問者は設定された正規の拝観順路(一方通行)に沿って進むことになります。白蛇の塚は、この順路の途中にありますので、道なりに進んでいけば自然とたどり着くことができます。

順路を逸れたり、途中で引き返したりすることは原則としてできません。金閣(舎利殿)を見た後、多くの人が出口へと急ぎがちですが、白蛇の塚はそこからさらに丘を登った先にあります。見逃さないよう、順路の看板に従って進んでください。

拝観順路における位置

金閣寺の拝観は、総門から入り、まず鏡湖池(きょうこち)越しに最も有名な金閣(舎利殿)の全景を鑑賞するところから始まります。

その後、金閣の近くを通り、書院の裏手から順路に従って裏手の丘を登っていきます。途中、「銀河泉(ぎんがせん)」(義満がお茶の水に使ったとされる泉)や「龍門の滝(りゅうもんのたき)」などを経て、丘を登りきったあたりで視界が開け、安民沢の池と白蛇の塚が現れます。

白蛇の塚と安民沢は、茶室「夕佳亭(せっかてい)」に到着する少し手前に位置しています。したがって、金閣を見た後の、拝観ルートの後半に差し掛かる部分にあると覚えておくとよいでしょう。

拝観所要時間

金閣寺の境内全体を、一般的なペースで拝観した場合の所要時間は、約40分から60分が目安です。これは、金閣(舎利殿)の前で記念撮影をし、順路通りに歩いて出口まで至る標準的な時間です。

もし、白蛇の塚の前でゆっくりと時間をかけて参拝する場合や、高台にある茶室「夕佳亭」からの眺めを楽しんだり、出口付近にある「金閣寺不動釜茶所(きんかくじふどうがまちゃしょ)」で休憩(お抹茶と和菓子がいただけます)したりする場合は、さらに20分~30分ほど余裕を見ておくとよいでしょう。

じっくりと境内を味わうのであれば、合計で60分から90分程度の時間を確保しておくことをお勧めします。

アクセスと拝観料金の確認

白蛇の塚を訪れるには、まず目的地である金閣寺(鹿苑寺)へ向かう必要があります。金閣寺の拝観に関する基本情報は以下の通りです。

これらの情報は変更される可能性があるため、訪問前には公式サイトで最新の情報を確認することをお勧めします。

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項目詳細
正式名称鹿苑寺(ろくおんじ) ※通称:金閣寺
拝観時間9:00~17:00 (年中無休)
拝観料金大人(高校生以上):500円 / 小・中学生:300円
所在地〒603-8361 京都市北区金閣寺町1

参考資料:相国寺「アクセス | 金閣寺 | 臨済宗相国寺派」

京都駅からの主なアクセス方法

京都市の中心部(特に京都駅)から金閣寺までは距離があり、最寄りの鉄道駅(JR円町駅や京都市営地下鉄北大路駅)からも徒歩圏内とは言えません。そのため、京都駅からは市バスを利用するのが最も一般的で分かりやすい方法です。

ただし、金閣寺は京都でも屈指の観光地であるため、特に観光シーズン(春の桜、秋の紅葉)や週末は、京都駅からの直通バス(101系統、205系統)が非常に混雑し、また道路渋滞に巻き込まれて想定以上に時間がかかる場合があります。

交通手段ルート・所要時間・料金(目安)
市バス(直通)京都駅前バスターミナル(B3乗り場など)から市バス101系統 または 205系統に乗車。
「金閣寺道」バス停下車(所要時間 約40~50分)。バス停から徒歩約5分。
料金:230円
地下鉄+バス地下鉄烏丸線「京都駅」→「北大路駅」(約13分)。
北大路バスターミナルから市バス204または205系統(約15分)→「金閣寺道」下車。
料金:合計520円(地下鉄290円+バス230円)
※京都駅周辺の渋滞を回避できるため、時間が読みやすい利点があります。
JR+バスJR嵯峨野線「京都駅」→「円町駅」(約7分)。
「西ノ京円町」バス停から市バス204または205系統(約9分)→「金閣寺道」下車。
料金:合計420円(JR190円+バス230円)
タクシー京都駅から約25分~40分。料金は約4,000円前後。
※渋滞の影響を大きく受けます。

※料金や所要時間は2025年11月現在の目安であり、交通状況によって大きく変動します。

東京や他のスポットとの違い

「白蛇」に関連するパワースポットや神社仏閣は日本各地に存在します。特に有名なのが、東京都品川区にある「蛇窪神社(へびくぼじんじゃ、通称:東京の白蛇さま)」や、山口県岩国市の白蛇神社などです。

「白蛇の塚」というキーワードで検索された方の中には、これらの有名な「白蛇」スポットと、金閣寺の「白蛇の塚」との違いが不明瞭な方もいらっしゃるかもしれません。この二つ(特に金閣寺と蛇窪神社)は、根本的に異なる点が多くあります。

  • 形態の違い
    • 金閣寺
      • 根本は臨済宗の「仏教寺院(鹿苑寺)」です。白蛇の塚はその広大な境内の庭園内にある、一つの「塚(石塔、モニュメント)」であり、信仰の対象ではありますが施設の本尊ではありません。
    • 蛇窪神社
      • 白蛇大神や龍神を主祭神として祀る「神道(しんとう)の神社」そのものです。独立した宗教施設であり、参拝専用の社殿や設備が整っています。
  • ご利益の違い
    • 金閣寺
      • 弁財天信仰と強く結びついており、主に「金運」のご利益が中心とされています。
    • 蛇窪神社
      • 金運(銭洗い弁天もあります)に加え、「立身出世(巳が龍に昇る=身が立つ)」「病気平癒」「良縁」など、神社としてのご利益が多岐にわたります。
  • 参拝方法の違い
    • 金閣寺
      • 「寺院」であるため、参拝は静かに「合掌(がっしょう)」して行います。神社のように柏手(かしわで)を打つのはマナー違反となります。
    • 蛇窪神社
      • 「神社」であるため、参拝作法は「二礼二拍手一礼」が基本です。境内にはお金を清める「銭洗い(白蛇清水)」の場所も設けられています。

このように、同じ「白蛇」の名を冠していても、その成り立ち(仏教と神道)や形態(塚と神社)、信仰の形は全く異なります。金閣寺の白蛇の塚は、世界遺産寺院の静かな環境の中で、鎌倉時代から続く古の歴史に触れながら金運を祈願する、という点にその大きな特徴があると言えます。

金閣寺で白蛇の塚を訪ねよう

  • 白蛇の塚は世界遺産「金閣寺」の境内にある
  • 金閣寺拝観料(大人500円)のみで訪れることができる
  • 境内の北西部、安民沢(あんみんたく)という池の中島に位置する
  • 塚の正体は鎌倉時代に遡る可能性のある五輪塔の笠を重ねた石塔
  • もとはこの地の所有者であった西園寺家の鎮守(守り神)とされる
  • 白蛇は弁才天(弁財天)の使いとされ、信仰と結びついた
  • 弁才天が財宝の神であることから「金運」のご利益が期待される
  • 京都でも知る人ぞ知るパワースポットとして注目されている
  • 拝観順路に沿って進めば見逃すことなくたどり着ける
  • 金閣(舎利殿)を見た後の、順路の後半に位置している
  • 金閣寺全体の拝観所要時間は約40分から60分が目安
  • 参拝は池の対岸から手を合わせ、お賽銭を投げ入れる人も多い
  • 東京の「蛇窪神社」とは異なり、寺院内にある「塚」である
  • 京都駅から金閣寺へは市バス(101系統・205系統)が便利
  • 金閣の華やかさとは対照的な、静かで厳かな雰囲気が魅力である

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